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地域活性化への提言・NEWS
            
学会発表:九州国立博物館のホスピタリティ
博物館のイメージを変えた市民応援団の取組み
        
時代背景と研究テーマ
 
 ここ10年間は効率や簡単便利な生活を追い続けていた日本が、少し不便であった一昔前(昭和30年代)を見直し始めています。和服の再利用、筆文字の流行、狂言や歌舞伎役者の有名人化、文楽や神楽の復活、神社仏閣への訪問(法話を聞く会)、昭和村の推進など「日本」あるいは「和」への復帰は、スローフードに代表されるスローライフや、日本の原風景探索や自然観察を行うエコ・ツーリズムも「日本人としてのアイデンティの模索」「アイデンティ探しの旅」と言えます。「にっぽんルネッサンス」「ネオジャパネスク」「ネオジャパニズム」が進展しているのではないでしょうか。里山の風景など昭和30年代の農山漁村をもう一度思い出し、安心(=癒し)、安全(=科学)な環境をアピールしている地域も増えてきました。

 日本人のニーズの多様化や観光動向の変化(特に知的好奇心を求める観光市場の拡大)を意識し、九州国立博物館では、新しい時代に合致した市民といっしょに歩む博物館にしようと試みることになりました。
研究テーマ
旅館でもない、レストランでもない、博物館のホスピタリティってどんなもの?
市民参加型の博物館で、ホスピタリティを感じてもらえるの?
      
           
九州国立博物館のコンセプト
 
 東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館に次いで開館した、最も新しい国立博物館です。 「日本文化の形成を、アジア史的観点から捉える」という、独自のコンセプトに基づき、展示を行うのみならず、文化財を守り、調査する博物館科学の現場としての、重要な役割を担います。また、多彩な教育普及事業を準備し、何度いらしても楽しい博物館を目指し続けます。                                              −公式HPより−
『学校より面白く、教科書よりわかりやすい博物館』『面白くなければ博物館ではない』『市民に開かれた博物館』『市民がつくる博物館』『市民参加型の博物館』『誰からも五感で楽しまれ、市民と共生し、市民の目線を大切にした博物館』『垣根の低い博物館』『何よりも市民にとって分かり易い博物館』『親しみ易い博物館』『市民社会との一体化、ボランティアがひとつの大きな特徴だということが社会的にも理解してもらえるような活動の場にしていく』など
                       −館長談話より−
  
交流事業のコンセプト
 
 物ではなく、人が主役の博物館。
学芸員、博物館ボランティア、支援する会はじめ
市民がそれぞれの役割を果たす博物館。
  1. 交流事業は、博物館の考え方や展示物などを一般来館者へよりわかりやすく伝えるインタープリターである
  2. 交流事業は、博物館と一般来館者との中間に位置する人たちとの協働により様々な層に対応する
  3. 交流事業は、実物展示に対応し、展示物をわかりやすく伝えるためのライブ(生)が基本
  4. 交流事業は、博物館と地域との交流、アジアとの交流、アジアや九州の博物館との交流を展示物ではなく、人を介して実施していく
  5. 交流事業は、現存の文化交流を大切に保存・伝承するだけでなく、九州国立博物館の存在により、新たな伝統を築いていくために、九州の文化交流団体を育成していく
  6. 交流事業は、博物館とのコミュニケーション向上=情報の共有のための手段として実施する
      
    
 交流事業の基本
  1. 交流事業の基本的な考え方
    博物館で働く人全員がコンセルジュ(専門家、よろず相談員、世話役、アドバイザー、コーディネーターなど)になった気持ちで、来館者をお迎えする。来館者に満足していただく行き届いたサービスをする博物館を目指す。
  2. 運営の基本は来館者の安全性、利便性、快適性が三本柱
    来館者誘導・VIP対応・マスコミ対応・スタッフ対応・救護・弱者対策・身障者対策・混雑時の対応・会場内の誘導・緊急時の対応など様々な事態に対する万全の対策を考慮し事前のスタッフ教育で充分把握させるべきだと考えます。      
           
 交流事業の仕掛けや仕組みのための基本的な考え方
  1. 「むずかしいを わかりやすく おもしろく」
    朝日小学生新聞では、子どもたちに社会での出来事をわかりやすく解説することに力を入れています。
  2. メインターゲットの高齢者と修学旅行(小学生、中学生)、外国人観光客だけでなく、今までの無関心層にも理解してもらえる解説が必要になります。
  3. オープン3年後が勝負といわれるように、オープン初年度は大勢の来館者で賑わいます。しかし、毎年来館者の減少が続き、当初目的を達成できない状態になる恐れがあります。もちろん、来館者数ばかりが評価対象になるものではありませんが、博物館に足を運んでもらい、学芸員が調査・研究したものを発表し、来館者に理解してもらう事が一番の評価になると考えられます。そのためには、来館者数をオープン初年度から維持していく(あるいは増やしていく)努力が必要になります。市民のニーズ(必要性)やウォンツ(要望)に応えて初めて、市民に支持される博物館になります
  4. 小学校4年生から5年生にわかってもらえる解説が必要になります。そうすると子供たちから高齢者まで全部の層に理解してもらえます。面白おかしく解説する。興味を持ってもらえるようにわかりやすい言葉で解説する。学芸員は学術調査・学術研究だけでなく、来館者への解説が求められています。大変ですが、日本で始めて市民に開かれた博物館を目指す九州国立博物館として、市民を味方につけて、日本で始めて毎年来館者が増える博物館にしていこうではありませんか。
   
 来館者に対する考え方
  • 博物館への来館者を中心とした利用状況を少し紹介しておきましょう。いうまでもなく館活動の基本は文化財資料の展示にありますが、文化交流展示室(いわゆる常設展示で、月に30〜50点の文化財の陳列換を行いながら、常時800〜900点を展示)と特別展示室(年に4〜5回、1回を6〜10週間程度の開催)で展示を行い、その他多くのボランティアの人達の力を借りながら、教育普及での展示をはじめ、館全体を多目的に利活用しております。
  • そして博物館のもう一つの大きな役割である文化財の保存についても、特別に博物館科学を前面に出した活動をテーマの一つにしております。それだけに日頃他所では見る機会の少ない文化財修理や保存の実際を目の当たりにすることが可能な場を設け、多くの方々に文化財保存の一面を理解いただけるようにしております
  • 「みんなに親しまれるこれからの博物館」は、工事のときから周辺住民を含めて嫌悪感を持たれてはいけない。ほぼ2年間にわたってダンプカーが土埃をあげ、周辺の住宅街を走るというのは印象が良くありませんよね。
  • 完成した後に、みなさんがあの博物館へは行きたくないという思いを持ってもらいたくない。それにここはうまく対応していったと思います。  周囲を見渡していただくと、池があって川があって、いわゆる里山という多くの人たちにとっての原風景に近いのではないかと思います。春にはうぐいすが啼き、ドジョウが泳ぎ、カエルが鳴く。夏は蛍、秋はトンボが飛んでいる。そういう里山の雰囲気に溶け込めるような「博物館づくり」を意識した。立地を活かすことによって、教育普及、エコロジーのような環境問題もしっかり「博物館のテーマ」として出していくことができる。こうした総合的な取り組みをやっている。
 
 市民による開館までの取組み
  • 昭和63年九州アジア国立博物館を誘致する会創立
  • アジアとのふれあい講座開催、大宰府市民まつり参加、視察研修、東京陳情活動、愛の国博まんじゅう製造販売、フォーラム開催など
  • 平成7年九州アジア国立博物館を支援する会創立(平成8年九州国立博物館を支援する会へ名称変更、現在は九州国立博物館を愛する会設立準備中)
  • 平成8年国博デー開催(現在も継続中)
  • 広報紙「ゆめふらっぷ」発行
  • 海外視察、国内視察、大宰府政庁まつり参加など活発化。春日市、大野城市、筑紫野市などでも啓発・募金活動実施
  • 九州国立博物館設置促進財団募金総額20億7千万円(最終的には市民の寄付は40数億円。国5、県4、市民1の割合)
  • 平成13年『九州国立博物館におけるボランティア活動について』提言(平成15年第2版を提言)
    平成14年国博ウォーク開催(1000名以上に建設地案内)
  • 博物館建設現場の見学案内開始(平成14年団体)平成15年9月市民見学会開始(平成16年6月まで約3000名を案内)
  • 平成16年10月大宰府政庁まつり参加(かざぐるま、拓本、うちわ等)
  • 平成16年11月博物館見学会開始(団体)12月から一般受付『館内見学会』(平成17年6月まで7700名)
  • 「博多どんたく」「ファミリー見学会」「スタードームフェスタ」「九博まるごとピッカ美化隊」など
ファミリー見学会など
  
 オープニングイベントでのコンセプトの認知活動
  • 九博は、ミュージアムホールや、ある程度広さと空間のあるエントランスホールを持っています。そういうところをなるべく100%使う。展示に関する様々なことを、色々な形で来館者に楽しんでもらいたい。
  • 歌や踊りもあるでしょうし、それを見にくるだけの方も、参加する方もいるかもしれない。あるいは特産品を買いに来る方もいるかもしれない。こうした展示だけに限らない総合的なとらえ方は、新しい博物館のあり方として今後も提案したいし、取り組んでいきたいですね。
  • 例えば、展示会場(文化交流展示室)で演奏する。モーツアルト、バッハ…三味線、オカリナ。
  • イベントは博物館の楽しみ方と利活用のあり方を提案。展示だけでなく、展示に関係するコンサート、ファッションショー、郷土芸能、能、お茶会、アジア各国の民俗芸能など交流をキーワードに展開
  • イベントによって市民が参加しやすい環境を作ることにより、より市民参加を促していく
  • 新聞、TV、雑誌、ラジオ、インターネットなどを通してパブリシティ活動を強化し、広報PRに努めた
 
 様々な来館者サービスイベント
  • オープニングイベント(2005/10/16~11/27)
    • アジアと日本の文化を比較することにより、どのように交流してきたかを 解き明かし、来館者にわかりやすく楽しんでもらうイベントを開催する
    • 日本の文化・アジアをはじめとする諸外国の文化を多様な切り口で散りばめる
    • 文化の交流、融合を提示できるものはコラボレートイベントを実施する
    • 博物館を中心に、街中にアジアと日本の交流の雰囲気を醸し出す
      • アジアと日本の関係を検証し、新たな出発としてアジアと日本の交流にスポットライトを当てる。
      • 文化に国境は無い、文化が響き合う。アジアから日本へ、日本からアジアへ。
      • アジアとの交流、連携、協働を実現する。
      • まず第一に『日本を知る』ことから始める。
  • 平成17年度は延べ185日間来館者イベントをミュージアムホール、エントランスホール、研修室、屋外で開催(平成18年度は延べ257日間)
  • 定例イベントとして確立:九博ミュージアムコンサート、九博朝日寄席、カフェコンサート(福岡女子短期大学)
オープニングイベント
きゅーはく ミュージアムコンサート
カフェコンサート 福岡女子短期大学
第1回「九博朝日寄席」
  
    
 開館後の市民の活躍
  • 入館者を温かく迎えてくれるのは、約300人のボランティアたち。館内のガイドだけでなく、手話通訳、夏休みの子どもを対象としたワークショップの企画・運営から展示室の環境チェックまで、博物館運営へのボランティアの関与は、前例がないほど深い。(西日本新聞2006/10/15朝刊)
  • 九博の花壇に花を植える(H19/6/4)
  • ピッカ美化隊の継続的な活動(毎月第1月曜、第3金曜)
市民との連携イベント;例:お正月遊びのイベント (ボランティアによる企画)
 入場者数の目標と実際
  • 年間来館者目標数(当初目標)
                 300,000人(当初半年は17万人が目標と言われていた)
  • 来館者数(実数:平成18年10月15日現在・1年間)
         2,205,741人(参考:H19/5/31現在3,363,360人)
         平日平均約5千人。土日祭日平均約1万5千人。
         300万人名中100万人は1階の無料ゾーンのみ。
  • 開館記念特別展(入場者数)
    • 美の国日本展(10/16~11/27 43日間)       441,938人
    • 中国美の十字路展(1/1~4/2 80日間)       251,963人
    • うるまちゅら島 琉球展(4/29~6/25 51日間)   177,478人
  • 特別展(入場者数)
    • 南の貝のものがたり(7/29~9/3 37日間)      63,560人
    • 海の神々(10/8~11/26 45日間)           139,981人
    • 若冲と江戸絵画(1/1~3/11 62日間)        300,171人
  • 9割を超える満足度とリピート意向。非常に高い評価を得ている
  • スムーズに現地に着いて、より滞留時間を長く、居心地良く過ごしたい要望が多い
      (来場頻度が上がるほどに滞留時間は長くなる傾向)
  • 飲食や休憩スペースなど滞留時間を長くするための改善が求められている
  • @駐車場A飲食B交通アクセスC休憩所に関する問題の順に要望が多い
  • 交通渋滞、駐車場確保の問題は近場の来館者にとっては現実的に頭の痛い問題『混むから』『駐車場が混んでいるから』がリピートを阻害する大きな要因になっている
  • 飲食面では女性の不満が圧倒的多数を占めている
  • 団体客の食事をする場がない
  • イベントなどの情報発信をする官民連携が不十分
  • 駐車場に誘導・案内する電光掲示がない
        
 市民ボランティアの生の声

  
 課題と今後の方針
  • 来館者の安定的な確保(年間100万人)
     @20代〜40代の若年層の2回目の来場誘導策と50代以上の「九博ファン」を引きつけること
     A福岡県外及び九州域外への働きかけ(情報提供の強化)
  • 太宰府天満宮を含めた周辺エリアの回遊性の提案が必要
  • 多様な来場形態を企画提案する必要
  • リピートのための細かな仕掛けが必要
  • 博物館の細かい展示内容を博物館側から来館者へ提供し、『博物館の楽しみ方』など利用をプッシュする必要
  • 地域と博物館の交流・連携・協働の強化(九博を愛する会が九博と市民のかけはしとなる)
  • 九州国立博物館のホスピタリティとは、来館者に『素晴らしかった・楽しかった・来て良かったと言ってもらえる』『笑顔で帰られる』『また来たいと思ってくれる』ために、具体的に満足してもらうコンテンツを提案し続け、検証・評価し、来館者の欲求(WANTS)や時代の流れに合わせて修正・改善していき、時代を一歩リードし、来館者に歴史・文化など先人の知恵や未来を見据えた考え方に学ぶ姿勢を、『展示』『交流事業』という博物館活動を通じて、市民に投げかける役割を演じること。さらに、博物館側と市民が連携し、文化を発信しまちづくりに役立てること。
  • 来館者にとって、いつお出でいただいても新鮮な文化の場であることを心掛けること(館長談話より)
  • 『九州国立博物館を支援する会』(S63年〜H18)が役割を終え、『九博を愛する会』(H18/6〜)へバトンタッチ。
  • 九博と市民の「かけはし」としての役割を担う組織が出来上がる(H19年6月25日総会)
  • 地域(4市1町)で九博を盛り上げることになる。
  • 九州各県との連携も強化される。(あじっぱの出前講座)
  • 九博は国際文化交流と地域間交流の橋渡しも担うことになる。(例:カンボジア=熊本県・玉名市『御朱印船交流』=大宰府市『絵の具を送る活動』)
  • タイ・バンコク国立博物館での九博セミナー開催(H19/7月)
  • 韓国中央国立博物館と九博を会場に 『日韓交流展』『吉野ヶ里展』の同時開催を計画(主催:佐賀県、九州地方整備局国営吉野ヶ里歴史公園事務所/韓国ではH19/10/15-12/2開催)
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